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2017/1/9 劇団炎舞 橘鷹志誕生日公演【伝八時雨】

2017/1/9 橘鷹志誕生日公演 【伝八時雨】


伝八  橘鷹志
勘助  橘鷹勝
三太  橘光鷹

能登屋親分  橘ひろと
お清  橘あかり
竜胆の政吉  橘美炎

達磨屋親分  橘魅乃瑠
達磨屋子分  橘もん太

小金井の小次郎 橘炎鷹


あらすじ:能登屋の伝八は許嫁のお清を達磨屋に攫われ、助けに向かうも、顔に二目と見られぬ火傷を負わされる。
事件の後、伝八を訪ねてきたお清は、その顔の傷を見ると「化け物!!」と怯え飛び出していってしまう。そこで初めて自分の火傷の酷さに気付き愕然とする伝八。
後日、家を訪ねてきた小金井の小次郎に、お清が心変わりをして伝八との結婚話は破談。代わりに一家に草鞋を脱いだ旅人 竜胆の政吉と祝言を上げる事になったと聞かされる弟分の勘助。伝八の辛さを思い、その事実を小次郎と共に隠そうとするが、三下の三太の口が滑らせてしまう。親分やお清の裏切りに怒り狂った伝八は、ドスを握りしめ祝言破りと能登屋へ向かう事になる。



顔に酷い火傷といえば【喧嘩屋五郎兵衛】。話の流れで思い出すのは【留八時雨】【妻恋の留八】など...そして、今回はその別パターンの【伝八時雨傘】が基だと思われる。大衆演劇ファンには定番の流れのお芝居。そしてそこに橘鷹志さん自身が台本を書いていくことで新たな変化が組み込まれていました。
観終わってまず感じたのは「よく頑張ったなー」ってこと。定番のお芝居に変化を入れるってすごく大変だと思うんです。何かを組み込めば何かを削らなければならない。何かを削れば不足が出来て矛盾も生まれる。そしてそれを補う為にさらに補正が...となると表現したいものがボヤけてしまいかねない。時間も人も道具も限られる中で、よく公開まで漕ぎ着けたなーと。鷹志さんの熱意は勿論、劇団の皆さんの協力あってのものなんでしょうね。

ーで、個人的な好みとしては、顔の火傷が酷くて良い!
無邪気に「サラシを替えてあげるわ」とお清がそれを解くと、下から現れたのは目を背けたくなるような半顔を潰した火傷。あの誰もが褒める顔を、あそこまでグチャグチャな傷で覆った鷹志さんに心の中で拍手。初めて見た時は、本当に目を背けてしまった位です。あれ位しなくては、「化け物」と言われるだけの説得力が無いものね。顔を焼かれるシーンなんて、上がる煙や肉の焦げる臭いさえしそうだったな。曖昧にされがち(留八だと火事)な場面なので、しっかりあって良かったー。

あと、物足りなさを感じつつも凄く嬉しかった所。
登場人物が達磨屋以外みんな良い人なんです。伝八を心から案じて寄り添う弟分の勘助。うっかり者で、やってはいけない事を全部やってしまうけれど、伝八の為に本気で泣いてくれる憎めない三下の三太。息子を慈しむように、共に怒り悲しみ見守る小次郎。

その他の、留八では傷付いた主人公を嘲笑い追い込む人達までがみんな優しい。
お清の結婚相手の竜胆の政吉は、伝八を妬んで陥れたり、私利私欲に走ったりはしない。話の冒頭では草鞋を脱いだばかりの能登屋への旅人仁義を通そうと、何度も伝八達に助っ人を申し出る律儀な青年。斬られそうになるお清を庇い、伝八に対する気持ちからか刀を向けることもせず、自分がお清の代わりに斬られる覚悟さえしていた。

お清も顔の変わってしまった伝八に祝言で酒を掛けたり嘲ったりしない。「化け物」と怯えたけれど、その後も体を壊すほど苦しんで、それ故の縋るような心変わり。自分の選択に苦しさも罪悪感もあっただろうな。

能登屋も伝八への恩を忘れるような男じゃなかった。小次郎や勘助に言われるまでもなく、娘を助けてくれた伝八への恩もあり、結婚破談への申し訳なさが苦しげな表情から伺える。長いこと可愛がってきた子分への愛情もあるが、それでも可愛い娘の幸せを願わずにいられない。そんな馬鹿で優しすぎる父親だった。娘達を庇い、土下座までして伝八に自分を斬れと詫びる姿も本物。その後も刀を振り上げた伝八から庇うように娘夫婦を大きな腕でしっかりと抱いていた。

伝八の置かれた状況は確かに辛い。だけど、誰も彼を陥れないし馬鹿にしたり嘲笑ったりしなかった。結婚の約束は守られなかったけれど、裏切りを恥じてくれる人ばかりだった。そして伝八を思いやり大事にしてくれる人ばかりだった。そのせいで伝八が「
祝言破り」「皆殺し」っていうまでの殺意を育てる土壌は弱いというか、省かれた気がしてしまうけれど、これはこれで幸せな事だなって思う。

他の劇団で【妻恋の留八】を観た時に思ったものです。「何でこんな結末にならないといけないんだ。お嬢さんや親分がもう少し優しかったら...きちんと人の心を持った人達がいてくれたら、こんな悲しい結末にならずに済んだのに」って泣きました。その「もしも」が急に目の前で展開された気分。ほんの少しの違いで、ほんの少しの優しさで人は悲劇に堕ちずに済むんだ。こんな幸せ?な結末にも辿り着けるんだって嬉しく思えた。誰も殺さないし殺せない。自らも死なないっていう結末に、ストンと違和感なく落ち着ける展開だなーって、そんなお芝居。どのパターンが良いとか、どれが正しいとかではなく、これもまた良いなっていう感じです。
分かる人には分かるって言い方をすると、バッドエンドループからやっと抜け出せたーっていう安堵感かな。

物語の最後。
長年世話になった能登屋を離れ、勘助と共に雨の中をゆく伝八。二人で一つの羽織りを被り、肩を並べて濡れながら花道を歩んでゆく。きっとこの二人は、この先もっと辛い目に遭うんだろうな。もっと苦しむかもしれないな。でも、二人でいられるなら大丈夫。共に思いやりながら歩いていけるなら、きっと何があっても大丈夫。そんな気がする。
雨なのに晴れやかな気持ちで見送ることが出来ました。


偉そうで申し訳ないけれど、やはり「よく頑張りました!!」という気持ちでいっぱい。
今やれることは全部注ぎ込んでのお芝居だったのだと思う。そしてこの時点で鷹志さん自身、新たなものを沢山吸収して次の段階に目を向けている事でしょう。お芝居を舞台で演じるという事だけに留まらず、舞台全体を作るという意識も強くなっているでしょうし、沢山の方からの意見を受けて課題も山積みでしょう。だからこそ、観る側はとても楽しみなのです。
今後ますます貪欲に役者道を進み、より良い舞台を見せて頂けることを心から期待しております。
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